訪問看護

訪問看護の移動時間を減らすルート作成の考え方

朝の光に包まれた住宅街を上空から見下ろした風景と、家々を結ぶ道

訪問看護ステーションの移動時間は、報酬が付かないのにスタッフの時間を確実に消費する「見えない人件費」です。1日6件の訪問で移動が1件あたり20分なら、1人あたり毎日2時間が移動に消えます。看護職員5.8人(1事業所あたりの平均・常勤換算)のステーションなら、月に200時間を超える計算です。移動時間を1件あたり5分減らせるだけで、月に50時間以上の余裕が生まれ、訪問件数の増加か、記録・カンファレンスの時間に充てられます。

この記事では、人員基準と訪問件数の関係を確認したうえで、移動時間を減らすルート作成の考え方、移動手段ごとの見積もり、移動手当の実務、そして担当未定の訪問をスタッフに自動配列する仕組みを整理します。

〜 前提 〜

人員基準と訪問件数の関係

訪問看護ステーションの人員基準は、介護保険では指定居宅サービス等基準の第60条・第61条、医療保険では指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準(平成12年厚生省令第80号)に定められています。看護職員(保健師・看護師・准看護師)は常勤換算方法で2.5以上、管理者は常勤の保健師または看護師です。

厚生労働省の令和8年6月の資料によると、訪問看護ステーションの1事業所あたり従事者数は8.1人、そのうち看護職員は5.8人(いずれも常勤換算)で、看護職員5人以上のステーションが増加傾向にあります。一方で、廃止・休止の理由としては従業員の確保難・管理者の退職・利用者の減少などが挙げられており、人材の確保が主な要因とされています。

つまり、ステーションの収益は「看護職員の人数 × 1人あたりの訪問件数」でほぼ決まり、人数を増やすことが難しい以上、1人あたりの訪問件数、すなわち移動時間の削減が経営の主要なレバーになります。

1日の稼働 移動20分/件 移動15分/件 移動10分/件
訪問時間(60分×件数)+移動時間の合計を7時間とした場合の訪問件数 5.2件 5.6件 6.0件
看護職員5.8人・月20日の月間訪問件数 約609件 約650件 約696件

移動時間を1件あたり10分減らすと、同じ人数で月に80件以上多く訪問できる計算です。

〜 考え方 〜

移動時間を減らす4つの考え方

1. 移動時間を「測る」ところから始める

多くのステーションでは、移動時間を感覚で把握しています。まず、直近3か月のスタッフ別・曜日別の総移動時間と平均移動時間を出してください。労働時間の適正な把握に関する厚労省のガイドラインは、使用者に労働時間の適正な把握を求めており、移動時間を記録しておくことは労務管理の観点からも必要です。測ってみると、特定のスタッフや曜日に移動が偏っていることがほとんどです。

2. エリアと時間帯でまとめる

朝の訪問は同じ地区に固め、昼をまたぐ訪問はステーションに近い利用者にする、といった「地区×時間帯」のまとめ方が基本です。新規の利用者を受けるときも、既存の訪問ルートに近いかどうかを最初に確認します。

3. 移動手段ごとの時間で見積もる

同じ2kmでも、自転車・バイク・車・電車では所要時間がまったく違います。車は駐車場所の確保に時間がかかり、都市部では自転車の方が速いこともあります。スタッフごとの移動手段を前提に、地図上の実距離から所要時間を見積もる仕組みがあると、ルートの良し悪しを客観的に比較できます。

4. 担当の継続性と効率のバランスを決める

訪問看護は担当の継続性が利用者の安心に直結します。「主担当は固定し、空いたコマや急な代替だけを効率優先で埋める」というルールを決めておくと、効率化が現場の反発を招きません。

〜 労務 〜

移動時間の労務管理と移動手当

厚生労働省の通達「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」は、移動時間について「使用者が、業務に従事するために必要な移動を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当する」としています。訪問介護向けの通達ですが、事業所の指示で訪問先間を移動する訪問看護にも同じ考え方が当てはまります。

移動手当は、移動手段ごとに「1kmあたりの単価×走行距離」で計算する事業所が一般的で、電車・バスは実費精算にすることが多いです。手当の計算には各訪問の移動距離が必要なので、ルートを地図上のデータとして持っておくと、手当の計算まで自動でつながります。

移動手段 手当の考え方の例 必要なデータ
自転車・電動自転車 1kmあたりの単価×距離 訪問間の距離
バイク・車 1kmあたりの単価×距離(ガソリン代・駐車料金の扱いを規程で明記) 訪問間の距離
電車・バス 実費精算 経路と運賃
徒歩 手当なしが一般的 距離(時間見積もり用)
〜 仕組み 〜

自動配列の仕組み

ルート作成を人手で行うと、担当未定の訪問をひとつずつ空いているスタッフに当てはめていく作業になります。自動配列は、この作業を次の条件をもとにまとめて行います。

  • スタッフの勤務時間と休憩、出発地と帰着地
  • 各スタッフが対応できるサービス種別と資格
  • 過去にその利用者を担当した回数(継続性)と、利用者側のNG指定
  • スタッフごとの移動手段と、地図上の実距離から計算した所要時間

これにより、「今月の担当未定の訪問をボタンひとつで配列し、結果をスタッフ別の総移動時間・平均移動時間・距離で比較する」という使い方ができます。気に入らない配列はドラッグで直し、シミュレーションとして全件を組み替えてみることもできます。

〜 Colibriなら 〜

Colibriのルート最適化

Colibriのルート最適化は、専用ツールを別に契約するのではなく、いつものシフト画面の機能として使えます。担当未定の訪問を、スタッフの勤務時間・出発地・対応可能なサービス・過去の担当回数・NG指定・移動手段を考慮して自動で配列し、移動時間は自転車・バイク・車・電車・バス・電動自転車・徒歩の手段ごとに地図上の実距離から計算します。ルート分析画面ではスタッフごとの総移動時間・平均移動時間・距離を地図とともに確認でき、移動手当は移動手段と距離から給与計算に自動で反映されます。

→ 訪問ルート最適化・スタッフ自動配列の詳細を見る

→ 訪問看護のシフト管理機能を見る

よくある質問

制度上の上限はありません。実際の件数は、訪問時間(30分未満から90分まで)、移動手段、地域の密度で大きく変わります。まず自ステーションの直近3か月について、1日あたりの訪問件数と移動時間をスタッフ別に出し、移動時間の割合が高いスタッフや曜日を特定するところから始めるのが確実です。

事業所が指示した訪問先間の移動で、その時間の自由利用が保障されていない場合は労働時間に該当します(厚労省通達は訪問介護向けですが、考え方は訪問看護にも当てはまります)。移動時間を減らすことは、そのまま残業の削減とスタッフの余裕につながります。

自動配列は「担当未定の訪問」に対して、既に担当したことのある回数や利用者との相性(NG指定)を考慮して候補を出す使い方が基本です。全件を機械的に組み替えるのではなく、継続性を優先しつつ空いたコマを効率よく埋めるツールとして使えば、担当の継続性はむしろ守りやすくなります。

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