訪問介護の勤怠管理が難しいのは、スタッフが事業所に来ないからです。直行直帰で利用者宅を回るヘルパーの労働時間は、タイムカードでは把握できません。そして厚生労働省は、訪問介護員が「一般的には使用者の指揮監督の下にあること等から、労働基準法第9条の労働者に該当する」としたうえで、移動時間や記録作成時間を含めて労働時間を適正に把握するよう事業所に求めています。
この記事では、厚労省の通達「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」(平成16年 基発第0827001号)を軸に、訪問介護の勤怠管理で迷いやすいポイントを整理し、GPS入退室を使った勤怠管理の実務をまとめました。
労働時間に「入る時間」「入らない時間」
通達は、訪問介護に特有の時間について次のように整理しています。
| 時間の種類 | 通達の考え方 | 実務上の扱い |
|---|---|---|
| サービス提供時間 | 当然に労働時間 | 実施記録の開始・終了時刻と一致させる |
| 移動時間 | 事業所が必要な移動を命じ、その時間の自由利用が保障されていない場合は労働時間 | 訪問先間の移動は原則労働時間。自宅と最初・最後の訪問先の間は通勤扱いが一般的 |
| 業務報告書等の作成時間 | 業務上義務付けられ、指揮監督の下で事業所や利用者宅等で作成する場合は労働時間 | 実施記録・支援経過を書く時間を勤務に含める |
| 待機時間 | 事業所が待機を命じ、自由利用が保障されていない場合は労働時間 | 訪問と訪問の間の「拘束された空き時間」は労働時間 |
| 研修時間 | 使用者の明示的な指示に基づく場合は労働時間 | 特定事業所加算の個別研修も労働時間として扱う |
ポイントは「自由利用が保障されているか」です。訪問と訪問の間に2時間空いていても、事業所から「その間は待機して急な依頼に対応するように」と指示していれば労働時間です。逆に、自宅に帰って自由に過ごしてよい空き時間は労働時間ではありません。この線引きを就業規則や雇用契約書で明文化していない事業所は、運営指導ではなく労働基準監督署の調査で指摘を受けることになります。
労働時間の把握方法
厚労省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」とし、使用者が始業・終業時刻を確認・記録する方法として、使用者が自ら現認するか、タイムカード・ICカード・パソコンの使用時間の記録などの客観的な記録を基礎とすることを原則としています。自己申告制はやむを得ない場合に限られ、その場合も実態との乖離を調査する義務があります。
訪問介護でこの原則を満たすのは簡単ではありません。事業所にタイムカードがあっても、直行直帰のヘルパーは打刻できないからです。現実的な方法は次の3つです。
- 実施記録の開始・終了時刻を勤怠の基礎にする:サービス提供時間は記録から確定し、移動・待機を規程に従って加える。
- スマホで出退勤を打刻する:訪問先での打刻を客観的な記録とする。位置情報を添えれば、打刻場所の裏付けになる。
- シフトの予定と実績を突き合わせる:予定どおりに終わった日はそのまま確定し、差異のある日だけサ責が確認する。
GPS入退室は2の方法で、打刻の時刻と場所を同時に残せるのが利点です。「本当に利用者宅で打刻したか」が記録として残るため、自己申告に頼らずに済み、サ責の確認作業も減ります。
キャンセル・休業手当・年次有給休暇
利用者都合のキャンセル
通達は、利用者からの利用申込みの撤回や利用時間帯の変更を理由に労働者を休業させる場合について、他の利用者宅での業務の可能性を検討するなどしても休業させざるを得ず、それが使用者の責めに帰すべき事由による場合は、休業手当として平均賃金の100分の60以上を支払わなければならないとしています。「キャンセルは無給」という運用は、そのままでは通達の考え方と合いません。代替の訪問を案内できるように、空いたコマがすぐ分かるシフト管理が労務面でも重要です。
交通費と最低賃金
訪問介護労働者の旅費・交通費は一般的には労働の対償ではないため、最低賃金との比較では賃金に算入しません。時給に交通費を含めて「最低賃金以上」と説明している場合は見直しが必要です。
年次有給休暇
雇入れから6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤していれば、登録型ヘルパーにも年次有給休暇を付与する必要があります。週の所定労働日数が少ない場合は比例付与です。有給取得時の賃金の計算方法(平均賃金か通常の賃金か)も就業規則で定めておきます。
登録型ヘルパーの労働条件明示
契約期間の定めの有無、期間の定めがある場合はその期間と更新の基準を、書面の交付により明示する必要があります。登録型では「仕事があるときだけ働く」という曖昧な契約になりがちなので、雇用契約書と就業規則の整備が第一歩です。
勤怠データを給与と加算につなげる
勤怠を客観的に記録できると、次の業務が一気に楽になります。
- 給与計算:サービス提供時間・移動時間・待機時間・研修時間を区分ごとに集計し、時給や手当に反映
- 常勤換算:勤務形態一覧表に必要な日ごとの勤務時間が、勤怠データからそのまま出せる
- 特定事業所加算:研修の実施記録と参加者の勤務時間が残る
- 人事労務ソフトへの連携:勤怠の集計結果をCSVで連携し、給与明細や社会保険の手続きへ
Colibriの勤怠管理
Colibriの勤怠管理は、シフトと同じアプリの中にあります。ヘルパーはスマホで出退勤を打刻し、打刻には位置情報(GPS)が添えられるので、直行直帰でも客観的な記録が残ります。実施記録の開始・終了時刻、訪問間の移動距離と移動手段はシフトのデータとして残り、移動手当や待機の扱いは給与計算に自動で反映されます。集計した勤怠データは人事労務ソフトへCSVで連携でき、常勤換算データのExcel出力にも同じデータが使われます。
よくある質問
参考資料(公式)
- 訪問介護労働者の法定労働条件の確保について(平成16年8月27日 基発第0827001号)
- 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日・厚生労働省)
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)e-Gov法令検索
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第30条 勤務体制の確保等