全国の訪問介護事業経営者1,004人に聞いたところ、BCP(業務継続計画)を策定している事業者は88.5%で、策定の課題は「ノウハウがない」(44.6%)、「時間がない」(32.0%)、「スタッフがいない」(31.9%)でした。一方で、策定したBCPを現場従業員に周知できているのは73.3%にとどまり、BCMの策定義務化を知らなかった方も25.2%いました。
この記事は、Colibri合同会社がBCPの完全義務化直前の2024年3月に実施した「訪問介護事業者のBCP策定実態」に関する調査の結果を、事業所の管理者の視点で読み解いたものです。介護事業所のBCPは令和3年度介護報酬改定で義務付けられ、3年間の経過措置を経て2024年4月から完全義務化されました。令和6年度の報酬改定では未策定の場合の減算も設けられています。義務だから作るのではなく、「災害時に行動できるBCP」にするために何が足りないのかを、調査と被災事業所の声から整理します。
BCPの策定率は8割以上、3割は義務化をきっかけに策定

策定している事業者に、いつごろから策定していたかを聞きました。
〜2021年と2022年を合わせると、6割以上が2022年以前から策定していました。もともと策定する予定があったかどうかでは、約3分の1が「義務化にあたり策定した」と答えています。

策定率が高いのは、調査時点で義務化まで1か月を切っていたためでもあります。管理者にとって次の問題は「策定したか」ではなく、「その計画が災害時に機能するか」です。
策定の課題は「ノウハウ」「時間」「人手」

自由回答では、「検討してこなかったので、どう取り組みを行うべきか手間取った」「取り組むに関しても専門知識がなく不安である」「職員の不足により、業務時間内での策定はできなかった」「策定までの資料探しに苦労しました」という声がありました。
ノウハウについては、厚生労働省が介護サービス類型ごとのBCPのひな形と記載例、研修動画を公開しています。訪問系サービス向けのひな形から始めれば、ゼロから書く必要はありません。時間と人手の問題は、BCPを管理者1人の仕事にせず、サ責や事務担当と分担して「連絡先リスト」「安否確認の手順」「優先する利用者の判断基準」のように部品ごとに作るのが現実的です。
現場従業員への周知は7割、残り3割弱が未周知

周知できていない理由としては、「職員の認識が薄い」「理解が足りない」「説明時間を取りたいが個々のスケジュールもあり全員にはまだ行き届いていない」「本質的な理解に時間が必要」という声が挙がりました。
訪問介護では従業員が事業所に集まる機会が少なく、直行直帰の登録ヘルパーには説明の時間を取りにくいのが実情です。基準省令はBCPの策定だけでなく、従業員への周知と研修・訓練の定期的な実施を求めています。全員を集める研修が難しいなら、BCPの要点をアプリの掲示板で共有し、既読を確認する、訪問の合間に短時間の訓練を組み込む、といった方法で「周知の記録」を残すことが運営指導の対策にもなります。
BCMへの取り組みと、義務化の認知
BCP(計画)を運用し続けるマネジメントがBCMです。BCMを進めるために効果的なBCP策定に取り組めているかを聞いたところ、「とても思う」「やや思う」を合わせて7割以上でした。

| あなたの会社ではBCMの策定を行っていますか? | 割合 |
|---|---|
| はい | 72.8% |
| いいえ | 27.2% |
被災事業所の声:紙とデータの使い分け
調査にあわせて、東日本大震災で被災した訪問系事業所(医療法人社団健育会 ひまわり在宅サポートグループ)の管理者に話を聞きました。要点は「震災直後」と「数日後」で必要な準備が変わる、ということです。
- 震災直後:電気・ガス・水道・電話などのインフラが止まるため、必要最低限の連絡先・住所・行動指針を記した小さな用紙を作り、スタッフが常に手元に持っている。
- 数日後:インフラが復旧し始めると、保存されているデータを確認できる。利用者の住所・病歴・サポートの種類がデータとして残っていれば、普段担当していない利用者を限られたスタッフで訪問するときにも、過去の情報をさかのぼってすぐに判断できる。利用者データがあれば、事業再開までの時間が大幅に短縮される。
管理者の方はBCPについて、「義務だから作成するのではなく、本当にスタッフ一人一人が行動に移せるようなBCPなのか」を大事にし、文章の書き方ひとつをとっても読んだときに行動できることを意識して、社内研修で何度も確認し合いながらブラッシュアップしていると話しています。
訪問介護の管理者にとっての示唆は2つです。紙の緊急カードはBCPの一部として必ず用意すること。そして、利用者情報と記録を事業所のパソコンや紙だけで持たず、クラウドに保存しておくことです。事業所が被災しても、復旧後にスマホからデータにアクセスできるかどうかが、再開までの時間を左右します。
調査概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査名 | 「訪問介護事業者のBCP策定実態」に関する調査 |
| 調査期間 | 2024年3月18日(月)〜2024年3月19日(火) |
| 調査方法 | リンクアンドパートナーズが提供する調査PR「PRIZMA」によるインターネット調査 |
| 調査人数 | 1,004人 |
| 調査対象 | 調査回答時に全国の訪問介護事業経営者であると回答したモニター |
| モニター提供元 | ゼネラルリサーチ |
| 調査元 | Colibri合同会社 |
Colibriでできること
Colibriはクラウド型のサービスで、利用者情報・シフト・実施記録はすべてクラウドに保存されます。事業所のパソコンが使えなくなっても、インフラの復旧後にスマホやタブレットから利用者の住所・連絡先・直近の記録を確認でき、普段担当していないヘルパーが訪問する場合でも過去の記録をさかのぼれます。BCPの要点や安否確認の手順は事業所内の掲示板で全従業員に共有でき、直行直帰のヘルパーにも周知の記録が残ります。データの保管とセキュリティの考え方は、セキュリティのページにまとめています。
よくある質問
参考資料(公式)
- 「訪問介護事業者のBCP策定実態」に関する調査(Colibri合同会社・PR TIMES・2024年4月2日)
- 介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修資料・動画(厚生労働省)
- 介護報酬(令和6年度介護報酬改定を含む・厚生労働省)