介護職員等処遇改善加算は、令和6年6月に旧3加算(処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算)が一本化され、令和8年6月からは対象職種が介護従事者全体に広がり、生産性向上や協働化に取り組む事業者向けの上乗せ区分(加算Ⅰロ・Ⅱロ)が設けられました。訪問介護の加算率は最大28.7%と、事業所の収入に直結する最大の加算です。
要件は「月額賃金改善要件」「キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅴ」「職場環境等要件」の組み合わせで、区分が上がるほど満たすべき要件が増えます。この記事では、厚生労働省の令和8年度の通知をもとに、加算率、区分ごとの要件、令和8年度特例要件、計画書と実績報告の流れを整理しました。
加算率と区分
処遇改善加算は、サービス別の基本サービス費に各種加算減算(処遇改善加算を除く)を加えた1月あたりの総単位数に、加算区分・サービス類型別の加算率を乗じて算定します。区分支給限度基準額の算定対象からは除外されます。
令和8年6月以降の主なサービスの加算率は次のとおりです。
| サービス区分 | Ⅰイ | Ⅰロ | Ⅱイ | Ⅱロ | Ⅲ | Ⅳ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 訪問介護 | 27.0% | 28.7% | 24.9% | 26.6% | 20.7% | 17.0% |
| 夜間対応型訪問介護・定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 26.7% | 27.8% | 24.6% | 25.7% | 20.4% | 16.7% |
| 通所介護 | 11.1% | 12.0% | 10.9% | 11.8% | 9.9% | 8.3% |
| 認知症対応型共同生活介護 | 21.0% | 22.8% | 20.2% | 22.0% | 17.9% | 14.9% |
| 介護老人福祉施設・短期入所生活介護 | 16.3% | 17.6% | 15.9% | 17.2% | 13.6% | 11.3% |
令和8年6月からは、訪問看護(1.8%)、訪問リハビリテーション(1.5%)、居宅介護支援・介護予防支援(2.1%)にも処遇改善加算が新設されました。令和8年4月・5月分は旧区分(訪問介護でⅠ 24.5%、Ⅱ 22.4%、Ⅲ 18.2%、Ⅳ 14.5%)のままです。
区分ごとの要件
加算Ⅰイの算定には、賃金改善の実施に加えて次の①〜⑦をすべて満たす必要があります。加算Ⅱイは⑥を、加算Ⅲは⑤と⑥を、加算Ⅳは④〜⑥を満たさなくても算定できます。加算Ⅰロ・Ⅱロは、それぞれⅠイ・Ⅱイの要件に加えて⑧の令和8年度特例要件を満たすことが条件です。
| 要件 | 内容 | Ⅳ | Ⅲ | Ⅱ | Ⅰ |
|---|---|---|---|---|---|
| ① 月額賃金改善要件 | 加算Ⅳの加算額(他の区分を算定する場合は加算Ⅳを算定した場合に見込まれる加算額)の2分の1以上を、基本給または決まって毎月支払われる手当の改善に充てる | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ② キャリアパス要件Ⅰ | 職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系を整備し、書面で定めて職員に周知 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ③ キャリアパス要件Ⅱ | 資質向上の目標と研修の実施・研修機会の確保を計画し、職員に周知 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ④ キャリアパス要件Ⅲ | 経験・資格・評価に応じた昇給の仕組みを整備し、書面で定めて周知 | ○ | ○ | ○ | |
| ⑤ キャリアパス要件Ⅳ | 経験・技能のある介護職員のうち1人以上の改善後の賃金が年額440万円以上(例外あり) | ○ | ○ | ||
| ⑥ キャリアパス要件Ⅴ | サービス類型ごとに一定以上の介護福祉士等を配置(サービス提供体制強化加算や特定事業所加算等の届出) | ○ | |||
| ⑦ 職場環境等要件 | 下記の区分ごとの取組の実施と、Ⅰ・Ⅱでは取組内容の公表 | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
職場環境等要件の数え方
職場環境等要件は「入職促進に向けた取組」「資質の向上やキャリアアップに向けた支援」「両立支援・多様な働き方の推進」「腰痛を含む心身の健康管理」「やりがい・働きがいの醸成」の5区分と、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」で構成されます。
- 加算Ⅰ・Ⅱ(Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ):5区分それぞれ2以上の取組、生産性向上の取組は3以上(⑰業務改善活動の体制構築 または ⑱現場の課題の見える化 が必須)
- 加算Ⅲ・Ⅳ:5区分それぞれ1以上、生産性向上の取組は2以上
- 生産性向上推進体制加算を算定している場合は、生産性向上の取組の要件を満たしたものとみなす
- 加算Ⅰ・Ⅱでは、取組内容を介護サービス情報公表制度の「事業所の特色」欄やホームページで公表する
生産性向上の取組には、「㉑介護ソフト(記録、情報共有、請求業務転記が不要なもの)、情報端末の導入」「㉒介護ロボットやインカム等のICT機器の導入」「⑳業務手順書の作成や記録・報告様式の工夫」などが含まれます。記録・シフト・情報共有をひとつのアプリにまとめることは、この要件にそのまま該当します。
令和8年度特例要件(⑧)
加算Ⅰロ・Ⅱロの上乗せを受けるには、次のいずれかを満たします。
- (ア)ケアプランデータ連携システム(同等の機能とセキュリティを有すると厚労省が認めたシステムを含む)を利用していること。申請時点で未利用でも、加入・利用を誓約すれば要件を満たしたものとして扱われ、令和9年3月末までに利用したうえで実績報告で利用実績を報告する
- (イ)生産性向上推進体制加算Ⅰ・Ⅱを算定していること(誓約可)
- (ウ)社会福祉連携推進法人に所属していること
さらに令和8年度は、特例要件を満たす事業所に限り、キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳと職場環境等要件についても「令和9年3月末までに対応する」という計画書での誓約で申請時点から要件を満たすものとして扱われます(実績報告で報告が必要)。
計画書と実績報告の流れ
| 手続き | 内容 | 令和8年度の期限(原則) |
|---|---|---|
| 体制届出 | 新規算定・区分変更の届出 | 令和8年4月1日(自治体により4月15日)。6月新設サービスのみの事業者は5月15日/6月1日 |
| 処遇改善計画書 | 別紙様式2-1〜2-3。当該年度に初めて算定する月の前々月末までに都道府県知事等へ提出 | 令和8年4月15日(6月から算定する新設サービスのみの事業者は6月15日) |
| 賃金改善の実施 | 計画に沿って基本給・手当・賞与等で改善。新たに増えた加算額はベースアップが基本 | 年度を通じて |
| 実績報告書 | 別紙様式3-1・3-2。最終の加算の支払があった月の翌々月末まで | 令和9年7月31日 |
| 保存 | 計画書・実績報告書と根拠資料を2年間保存 |
複数の事業所を持つ法人は、計画書と実績報告書を法人単位で一括作成できます。賃金改善の根拠資料(賃金台帳、就業規則、研修計画など)は実地で確認されるので、勤怠・給与のデータと突き合わせられる形で保管しておきましょう。
令和8年度に増えた加算額の使い方
通知は、令和8年度に令和7年度と比較して増加した加算額(新規算定、上位区分への移行、加算率の引上げによる増加分)について、過去の賃金改善の実績にかかわらず、新たに賃金改善を実施しなければならないとしています。その際、新規に実施する賃金改善はベースアップ(賃金表の改訂により基本給または決まって毎月支払われる手当を一律に引き上げること)により行うことが基本です。手当や一時金の組み合わせは、賃金体系が整備途上の場合などに限られます。
実務でつまずきやすいポイント
- 月額賃金改善要件の計算:加算Ⅳ相当額の2分の1以上を基本給等で配分する必要があるため、賞与や一時金だけで配分している事業所は付け替えが必要です。
- 年額440万円の該当者:介護福祉士で経験・技能のある職員のうち1人以上。小規模事業所や地域の賃金水準を理由とする例外はありますが、合理的な説明が必要です。
- 職場環境等要件の証拠:「取り組んでいる」だけでは足りず、Ⅰ・Ⅱでは公表が必要です。研修の実施記録、有給取得の確認、業務時間調査の結果などを残しておきます。
- キャリアパス要件Ⅴの加算届出:訪問介護では特定事業所加算などの届出が必要で、介護福祉士の割合を毎月確認できる仕組みがあると安心です。
- 実績報告の根拠:加算額と賃金改善額の突き合わせは、給与計算のデータがそのまま根拠になります。
Colibriでできること
Colibriは、処遇改善加算の申請書類そのものを作るソフトではありませんが、その根拠になるデータを日々の業務から自動で残します。シフトと勤怠から集計した勤務時間で給与計算を行い、常勤換算データや介護福祉士の割合の確認に使える集計をExcelで出力できます。記録・シフト・情報共有・勤怠がひとつのアプリにまとまることは、職場環境等要件の「介護ソフト・情報端末の導入」「記録・報告様式の工夫」にあたり、ケアプランデータ連携システムの標準仕様にも対応しています。
よくある質問
参考資料(公式)
- 介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度・厚生労働省)
- 令和8年度介護報酬改定 介護職員等処遇改善加算の拡充(厚生労働省)
- 介護職員の処遇改善 特設ページ(厚生労働省)計画書・実績報告の様式、職場環境等要件の事例集
- 「処遇改善加算」の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります(厚生労働省リーフレット・令和6年度)